平成会 大津磨き講習会
東京都左官職組合連合会 平成会(原田会長)が3月20日に、
職連会館に於いて大津磨き講習会を開催しました。
講師は大津磨きの匠、忍者左官 小沼充氏と、
小沼氏と共に伝統工法を若い左官職人に伝える、
木村左官工業所 木村一幸氏です。
ご両人の卓越した技量は左官の世界では衆知のところ。
その本物の技を学ぼうと若い職人さんが集まりました。
先ずは、基本となる材料の調合から始まります。
正確に計量されて灰土が出来上がりました。
引土も時間をかけて完成です。
材料作りから丁寧に作業する様子を見ていると、
既に大津磨きの施工の緊張感が伝わってきます。
材料調合のレシピを確認、記録する参加者の皆さんです。
間違いは許されません。
灰土の塗り付け開始です。
塗り付け順から、鏝の握り、運び方を指導する小沼氏です。
氏曰く、皆の中で誰か1人に手解きしている時に他の受講者が
それをどれだけ見て学ぶかが大事と、技術的なことだけでなく
どんな時も技を吸収しようという自らの意欲を持ち続けることが大切だと説きました。
そう言えば大分昔の話ですが、ある講習会で久住章氏の鏝さばきを
見学者の一番後ろで、同じ鏝を持って同じ握り、同じ鏝さばきをして、
体の動きもそれに合わせて忠実に踊るように真似ている若き小沼氏を
思い出しました。
その時は最初ふざけてるのかと思ったのですが・・・。
木村氏も優しく時には厳しく、あらゆる左官のノウハウを受講者に
指導していきます。
その奥深い豊富な経験と知識を惜しげもなく浴びせる姿は、
鏝を動かし続ける受講者背中を、早く本物に近づけるよう気持ちを込めて
推し進めているように見えます。
良き兄貴風が爽やかに吹き付ける職連会場です。
参加者全員が見やすい場所で同時に進行する小沼氏の
デモンストレーションが行われます。
いつでも見ることが出来る、これは受講者にとって最高に有り難い企画ですね。
引土の塗り付け開始!
引土押さえに掛かります。
最初より体の動かし方が確実に進歩しています。
呼吸を忘れているのかと思うほど仕上げ面と鏝面に神経を
集中しています。
オオッ 姿が映ってる!
いよいよ最後の追い込みです。
こちらも大津磨き独特の深い艶が出始めました。
黒光りしてきました。
赤いヤッケが鮮やかに映っています。
受講者のレベルの高さが伺える瞬間です。
実技全員参加の納得の講習会も無事終了し、最後に集合写真をパチリ。
皆さんそれぞれが得る物の大きい、内容の濃い講習会だったと思います。
若い職人さんが集まって技術を見せ合い競い合うのはとても素晴らしい
ことです。
良き仲間、良きライバルがいることは大切なことですね。
皆さんの今後が楽しみです。
全国で左官の塗り壁講習会が増えています。
本物の建築を求める声が大きくなり、本物が出来る左官職人さんを
目指す若い人が増えてきているからです。
本気で取り組む姿を拝見して、改めて本気で応援したいと思いました。
小沼氏、木村氏の若手左官のリーダーが受講者に左官愛を
思い切り注入した素晴らしい講習会でした。
皆様の今後の益々のご活躍をお祈りしています。
ありがとうございました。
冨澤 英一
富沢建材株式会社代表取締役。1953年東京都中野区生まれ。昭和26年に父が創業した建材店を2代目として継ぐ。顧客であった左官・故榎本新吉さんに幼少のころから可愛がられ、その縁で『左官教室』元編集長・小林澄夫さん、左官・久住章さん、全国各地で活躍する多くの名工、名人に出会う。以降、左官の技や自然素材に惹かれ、熱心に各地に足を運び、そこで産出する土や砂、石灰などの左官材料を集め、販売している。