久住有生 パオ連続講座
9月26日(日) パオ連続講座 第7回目
お待ちかね、世界を飛び回る左官 久住有生氏 の登場です。
テーマは「うちの子 アホやから 左官にして」
何やら意味深なテーマですね。
連続講座も7回目を迎え参加者の皆さんも益々左官の虜になってます!
そこにアイドル系左官 久住有生氏の・・・
いや、左官の伝統的なものから新しいものまで世界を股に掛け
幅広く格好良く仕事をこなすスーパースターの世界が始まります。
最初の技は、やはり伝統的日本建築の真髄を表現する久住氏の
類い希な鏝さばきです。
特に茶室の仕事は、ご主人が一番気に入っている茶器などを中心にして
壁を考え、そのものが一番綺麗に見えるように壁を塗るそうです。
久住氏の心技体が一つになるときお施主様の求める壁が完成するのです。
そして、その仕事の正確さは伝統左官技法の美しさを限りなく表現する
極みの世界です。
単純なものほど難しく、このなまこ壁も壁一面でミリ単位の精度を追求し
驚くほどの人工を掛けて仕上げたそうです。
徹底的に妥協を許さない究極の伝統技法で仕上げた作品です。
次に紹介されたのは、ご存知の方も多いとは思いますが氏の代表作の一つ、
INAX 常滑 土・どろんこ館です。
誰もが驚かされた大迫力、且つ繊細さも兼ね備えた土の館です。
建物内外に繰り広げられた久住ワールドは言葉を無くす土の秀作です。
こちらは仙台での公共施設の天井の漆喰磨きの現場です。
とてつもない面積をご覧のように見事に磨きを掛けてます。
磨き仕上げと言えば小さな面積でも施工のタイミングが難しい工法で、
どうやってこんなに大きな面積を仕上げたのか、その技法に謎が
深まるばかりです。
この様な何とも愛くるしい植物と戯れる土壁もお手のもの!
実際に生き生きと育つ草花に土壁って生きているんだなと
つくづく思うのでした。
久住氏のどんな曲面でも下地から作れば出来ると言うノウハウと
センスの良さが表れた作品ですね。
六本木農園の版築の壁です。
全国の農家の土を使って仕上げました。
こちらは鏝絵の大作です。
オリジナルデザインの秀作はオーナー様の思いを読み取り
心を込めて仕上げた会心の作品です。
氏の芸術性の豊かさが溢れ出ていますね。
でもやはりそこには、努力と苦労の積み重ねが見え隠れします。
阪神淡路大地震の経験も良い勉強になっているそうです。
久住氏のいつも笑顔で優しい表情からは想像出来ない
重い深い心技体の修養、訓練を積み重ねているのですね。
海外での活躍振りもテレビ等で何度も紹介されています。
毎年フランス グルノーブル大学の土祭りでは学生に講義をとり、
左官の魅力を世界に発信しています。
この建物は、アルケスナンの王立製塩所です。
ここの改修工事で発揮した久住テクとは、 なっ何と・・・
工事現場を覆うファンタスティックフェンスなのです!
いろいろな土を使い夢の世界に飛び込んだような環境にしてしまう、
綺麗で可愛い目隠しフェンスです。
久住氏の手に掛かれば修復現場もこの通り!!
何と言うことをしてくれるのでしょうか、素晴らしいの一言です。
ある時は砂漠の中に茶室を造りました。
現地で全ての材料を調達し作り上げた作品です。
どんな所でも、完璧に物が揃っていなくても充分に
作り上げる事が出来るのですね。
砂漠の中とは思えない和の空間です。
茶道の心得もある久住氏、着物も持参でお茶を振る舞われたそうです。
これまた粋なお姿ですね。
さぞ、オーナー様、皆様が喜ばれた事でしょう。
講座修了後のお楽しみ懇親会です。
更に久住氏のお人柄に触れさせていただく事が出来ました。
久住氏曰く
「今までの左官の世界は提案すること無しに来てしまいました。
うちの子 アホやから 左官にしてと言われてしまう事が左官を駄目に
して来たのだと思います。
世界では物を作る職人さんは尊敬されています。」
職人の本音を語る久住氏です。
伝統的なものから新しいものへ、一般の人、現代建築に取り入れやすい
左官の仕事を提案していく事が重要だと訴えます。
何もないところからフリーハンドで下地から作り始めれば何でも出来る、
それを実行しているのが久住氏です。
左官の良さを広める為に頑張り続ける若きカリスマ左官なのです。
久住氏の物事の考え方、見方、触れ方、作り方がとても良く理解出来て、
心地よく心と体に染み込んで来たような気がします。
そして、テレビ等で度々登場し名声を得ているにも拘わらず、
その謙虚で魅力的な人柄が世界の人を引き付けて止まないのですね。
これから更に久住氏がどのような世界を造られて行くのか楽しみです。
久住有生様 木村謙一様 ありがとうございました。
次回はいよいよ最終回 10月24日(日) 2時
伊勢の西川和也氏の登場です。
詳しくは パオ まで。
※ソムリエ雑記再録のため現在と異なる情報が掲載されている場合がございますのでご了承ください。
冨澤 英一
富沢建材株式会社代表取締役。1953年東京都中野区生まれ。昭和26年に父が創業した建材店を2代目として継ぐ。顧客であった左官・故榎本新吉さんに幼少のころから可愛がられ、その縁で『左官教室』元編集長・小林澄夫さん、左官・久住章さん、全国各地で活躍する多くの名工、名人に出会う。以降、左官の技や自然素材に惹かれ、熱心に各地に足を運び、そこで産出する土や砂、石灰などの左官材料を集め、販売している。