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投稿日2010年09月19日

宮澤喜市郎 黒漆喰磨き

富沢建材(株)技術講習会のご案内
第8回 漆喰・土壁 技術講習会 好評受付中
10月2日(日)開催 富沢建材株式会社
久住有生氏 登場! 「次世代左官への提案」
詳しくは「富沢建材ホームページ 新着情報」 をご覧下さい。
150名様 定員になり次第締め切らせていただきます。
参加ご希望の方は早目のお申し込みをお願い致します。


新潟県のカリスマ左官 宮澤喜市郎氏の左官道場へお邪魔して来ました。
念願だった宮澤氏との対談に、心も体も心地良い左官酔いになった
深~い一日でした。

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皆様ご存知、宮澤氏は漆喰磨きの名工です。
氏は真壁の左官教室で、平成16年から19年まで長きに渡りその左官の技を
若き左官職人に伝承し続けて来ました。
その他、全国に多くの伝統的建築物の施工に携わっておられます。

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宮澤道場は想像以上に左官のエネルギーが詰まっている塗り壁の聖地です。
先ずは昨年9月に久住章氏と技を競いあった時の作品が出迎えてくれました。
説明の通り、宮澤氏と久住氏の仕上がり具合の違いを確認する事が出来ました。
どちらも究極の出来映えです。

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壁に飾ってある写真に気付き何方かと尋ねれば?
中央におられる方が、宮澤氏の師匠 新潟県新井市の水島左官様と言うことで、
それはそれはピカイチの凄い技の持ち主であったそうです。
水沢氏の生前に黒磨きの講習会を行った時の一枚です。
左から2番目のちらっと正面を覗き込んでいる方は、若き挾土秀平氏です。

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この日も、山形県と四国の香川県から若人が勉強に訪れていました。
直に教えを請う真剣な姿勢に、左官の明るい未来を見たような気がしました。

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そして宮澤氏が鏝を取り、お手本の施工を開始します。
中塗り最終の砂漆喰の押さえ込みは、その段階で綺麗な仕上がりに見えるほど、
艶やかに鏝が当てられています。

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時間を置いて何度も掌で水引具合を見て、
黒ノロを掛けるタイミングを計ります。

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次に秘蔵の黒ノロを取り出し、

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ダマや不純物を取り除くため、目の細かい布で濾していきます。
このノロは久住氏曰く、宮澤氏オリジナルの極上の黒と言わしめた、
5年物の究極の逸品だそうです。
墨の良さは勿論、仕上がりの邪魔をする遊離石灰等を徹底的に排除した
ものなのです。

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黒ノロの塗り付けが始まりました。
無駄の無い鏝さばきは、手際よく平均にノロを配り塗り広げていく
熟練の技です。

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鏝が通せるまで均一に圧力を掛けながら押さえ込みます。
見ていて分かるとても強い面が作られていきます。

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砥の粉打ちをして更なる磨きを求めます。

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手擦りで砥の粉を馴染ませていきます。
この段階でもうピカピカ!

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いよいよ仕上げの最後の鏝押さえです。
宮澤氏の顔がパンと写る素晴らしい黒磨きの完成です。
一気にここまで持ってくる動きは、迫力満点です。

施工中、氏が何回も口にする言葉は?
「私は上手くはないけれど、誰にも負けない強い保つ壁を作り続けて来た。」
新潟の地で、年数が経っても艶のあせない壁を追究し続けた強者が語ります。
その検挙でありながら力強い自信に満ちた言葉に感動を覚えると同時に、
宮澤氏の左官魂が見えた清々しい瞬間でした。

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今までなかなか直接お話を伺うことの出来なかった宮澤氏ですが、
この度は作業をしながらいろいろな事を話しいただきました。
師匠の水沢左官様のこと、宮澤氏の若かりし頃のこと、家族のこと、
今までお世話になった方々のこと、材料、道具のことなど、
一度に聞くのは勿体ないほど沢山のお話をして下さいました。
そうそう、初耳は地元で採れる村上粘土の名付け親は榎本新吉親方だったこと!
榎本氏との長きに渡る深い繋がりも感動ものでした。
やはりカリスマ同士、何処かで繋がって切磋琢磨しあっているのですね。

素晴らしい新潟の一日になりました。
宮澤氏の壁への思いを知り、改めて左官の奥深さを知ったのでした。

宮澤喜市郎様、ありがとうございました。
また、勉強に行かせて下さい。

※ソムリエ雑記再録のため現在と異なる情報が掲載されている場合がございますのでご了承ください。

土と石灰のソムリエ

冨澤 英一

富沢建材株式会社代表取締役。1953年東京都中野区生まれ。昭和26年に父が創業した建材店を2代目として継ぐ。顧客であった左官・故榎本新吉さんに幼少のころから可愛がられ、その縁で『左官教室』元編集長・小林澄夫さん、左官・久住章さん、全国各地で活躍する多くの名工、名人に出会う。以降、左官の技や自然素材に惹かれ、熱心に各地に足を運び、そこで産出する土や砂、石灰などの左官材料を集め、販売している。

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