小沼充左官 下北沢の家 塗り壁
左官三昧の素晴らしい住宅をご紹介します。
下北沢の家
萩野アトリエ 萩野紀一郎氏の設計による木、土、漆喰、和紙、漆を用いた、
究極の快適住宅です。
萩野氏は能登半島地震で倒壊した土蔵や町並みを保全する活動を
続けておられます。その様子はNHKテレビのお昼のゴールデンタイムで、
大きく紹介されました。
現在は輪島市にお住まいで毎週上京されて竣工までの運びとなりました。
本物を求めるお施主様と本物を作り上げる萩野紀一郎氏と名工職人さん達の
技あり住宅はやすらぎと癒しの理想的住宅です。
そして塗壁は、左官 小沼充氏が腕を振るった事は言うまでもありません。
どうですかこのきりっとしたセンスの良さが光るデザインは!
見るからにこだわりの家作りが想像出来ます。
外部の壁は木と見事な調和を見せる深草色の左官掻き落としの技、
現場調合で作られたセメント系の材料で丁寧に仕上げてあります。
右の入り口から玄関に上がる階段脇の壁もモルタル掻き落としが、
施工されています。
次々と左官技が表れますね。
そして、玄関です。
さすが、本日のオープンハウスには大勢のお客様がお見えの様です。
オオッ 正面の壁には・・・。
小沼氏の絶妙な 「沖縄土大津磨き」 が渋く輝いています!
両袖を村上粘土の糊さし仕上げ白壁、天井には能登の和紙を
あしらい、互いを品格ある仕上がりで高めあっています。
いやー とっても上品で美しいですね。
初めて見る感動の作品です。
玄関から思い切りガツンとやられました!!
入って左側の部屋は音楽を楽しむプレイルームです。
壁は白い漆喰鏝押さえ仕上げで、その調湿性能と音響効果も考慮した、
空気の綺麗な室内になっています。
なるほど、楽器にも漆喰はその性能を発揮しているのですね。
広い室内はグランドピアノがとても良くお似合いです。
あれ?ピアノを良く見ると・・・。
これまた ウオッッ
スタンウエイ・アンド・サンズではありませんか!!
世界最高峰と言われる超々高級ピアノです。
この名器スタンウエイを預かり守る漆喰壁って凄~い、偉~い。
そして驚きは続くのでした。
こちらの浴室・パウダールームも実に素晴らしいです。
洗面台には能登輪島の伝統工法 拭き漆の技法を施してあるそうです。
広々とした室内に沢山の光が差し込むとても爽やかな空間です。
2階に上がる階段室です。
上がり切って振り返ると優しい白土の壁に包まれているのに
気付きます。
2階フロアーは南からの光をいっぱいにに取り込める開放的な
空間が待っていました。
選り抜かれた木材と漆喰の壁が見事に調和する、
とっても贅沢な展開です。
快適な生活が約束された本気で羨ましくなる世界です。
やはり空気の良さを実感するプレミアム空間ですね。
暫し言葉を忘れ無重力状態に居るようにあちらこちらを
さまよいます。
リビングとつながる白土で仕上げた書斎です。
とても落ち着く感じです。
魅力的で楽しそうななキッチンですね。
ここではどんな美味しいお料理が振る舞われるのでしょうか。
想像してたら急にお腹が空いてきたのはナイショです。
洗面所内にも白土の壁を施し、漆喰壁と相まって
その質感を楽しませてくれます。
敢えて同じ白を組み合わせるのも技の内なのですね。
改めて大津磨き壁の前に立ちます。
沖縄土と村上粘土、こだわりの土で仕上げた作品は
艶やかなサンゴの赤い色合いと、深みのある白色の
両方の美しさを楽しめる最高の仕上がりを見せています。
玄関に飾られた絵の木の額に何とも似合う土壁です。
萩野氏曰く
「東京の住宅地にしては少々欲張り過ぎた住宅ですが、
その分シンプルな構成と素材の種類を減らすように心掛けました。」
良く聞けばそれはとても難しいことだと思います。
建築の伝統工法を取り入れた優れた設計デザイン能力と、
高度な技術を持つ職人さんとが出会ってこそ初めて可能な
仕事だと思います。
ここまで技を駆使し完成された建築には、なかなかお目に掛かれません。
下北沢の家、拝見出来たことをとても嬉しく有り難く感謝します。
オーナー様、萩野紀一郎様、小沼充様 皆様、ありがとうございました。
今後の仕事に大いに参考にさせていただきます。
※ソムリエ雑記再録のため現在と異なる情報が掲載されている場合がございますのでご了承ください。
冨澤 英一
富沢建材株式会社代表取締役。1953年東京都中野区生まれ。昭和26年に父が創業した建材店を2代目として継ぐ。顧客であった左官・故榎本新吉さんに幼少のころから可愛がられ、その縁で『左官教室』元編集長・小林澄夫さん、左官・久住章さん、全国各地で活躍する多くの名工、名人に出会う。以降、左官の技や自然素材に惹かれ、熱心に各地に足を運び、そこで産出する土や砂、石灰などの左官材料を集め、販売している。