天然無機顔料の魅力
天然無機顔料 DOLCIの概要
- 天然無機顔料 DOLCIはイタリアのヴェローナで取れる土を焼いて作られ、27種類以上の色がある。
- 天然無機顔料は耐候性があり、色が変色しない特性がある。
- 天然無機顔料は合成顔料と比べても価格は高いが、耐候性の強い素材として重宝されている。
- その品質や性能から画家たちにもよく使われており、絵画や建材など幅広く用いられている。
— 左官コミュ運営)天然無機顔料とは?
冨澤氏)これはね要するに土そのものなんですよ。べイタリアのヴェローナで取れる比較的黄色いの赤いの茶色いの、色が豊富みたいなんですね。それを、この会社の独創の技法っていうかの製造方法で、今27種類あるんですけど、27どころじゃねえか。
それをね、焼いて。品番の色に定着させてるんですね。土だから自然のものだから、赤みが薄かったり濃かったりとかいろんなもんが取れるわけですよ。それを顔料として使うには、番手として色決めしなきゃいけないんです。それを調整して色に固定して、出荷したものが天然無機顔料です。
これ(天然無機顔料)を作れるところはそんなにないらしいんです。値段的には非常に高価なものになっちゃうんですけど、でもやっぱり他の合成顔料っていうのは、いくつかの色を混ぜて、黄色にしてみたり、茶色にしてみたり、そのように作っているんです。
一方、天然無機顔料は土そのもの。(色々なものを)合わせたものでも何でもないんで、まず合成顔料に比べるとその耐候性が違います。(天然無機顔料の耐候性の例として)ポンペイの遺跡で出てきてる赤の壁面とか、ああいうのが残ってるっていうのがわかるように耐候性がすごいのと、あと、発色性がやっぱりすごいんですね。無機質の土だから、石灰に混ぜたり、白いセメントに混ぜたり、普通のセメントでもいいし、土に混ぜるのに何の問題もないし、そういう意味で非常に相性のいいっていうか、完成された顔料っていうことなんでしょうね。
— 耐候性について教えてください
耐候性が高いということは、要するに色が変色しないんです。合成顔料の場合、顔料によっては四つも五つ鉱物性とかそういうのを混ぜて作るので、そのうちのどれか1個が変色しても色変わっちゃうんですよ。
だからそういう意味で、ザーッと一年中太陽に当たりっぱなしとかね、そういうことになれば、これだって色土で変色するもちろん可能性はありますけども、通常の使い方であればもう、ほとんど変色しないっていうのが天然無機顔料の耐候性の高さなんですね。
いろんな場面で工法としてはね、土を使ったり、石灰を使ったり、いろんな仕上げる方法あるんですけどね。掻き落としだとか洗い出したとか研ぎ出しだとかっていうか、掻き落としっていうのは塗りつけたものを剣山みたいので書いて、表面をザラザラにわざとして凹凸見せるやつと、洗い出しってのは濡れたスポンジとか、濡れた刷毛とか、そういうので塗りつけた後にそれをふいたり、表面を洗い流したりして、石の目とか砂の目とかを出して、あとは研ぎ出しっつって、塗りつけたものをこんどグラインダーで削って、よくあるうちの方もそうですけど、ピカピカの床にするとか、そういうものに耐候性の高い顔料はうってつけみたいですね。
ーー 天然無機顔料はDOLCI(ドルチ)以外には存在するんですか?
土の顔料としてはあるんだろうと思いますけども、そんなにそうなってもやっぱり、絵の世界で回ってるもんとか、青いとんでもない何とか、名前出てこないけど、あのすごい有名な青の顔料なんかは、とんでもない値段しますよね。
ーー フレスコ画とかで使われてるものですか?
そうフラスコ画とか油絵で使われているやつ。それはもう要するにの退色がしないっていう証明です。やっぱり絵画なんかは、モナリザの絵じゃないけど、色が変わっちゃったらダメじゃないですか。もうあれだけ色が変わらないでというのは、保存方法も関係していると思いますが、そういうための顔料っていうのはものすごい(耐候性を持っている)わけですよね。
だから画家が使うものってのはやっぱりそういう意味では本物の変色しない、耐候性の強い、そういうものを使っているんだと思います。そういう意味でも、画家さんが使われてる顔料ですから良いもんだと思いますね。
ーー ラピスラズリなんかも天然顔料の一つですか?
そうそう超高級品、青の本当にいいやつね。イタリアでは店舗とかね、そういうの必要っていうところは壁一面を赤にしたり青にしたりするためにもちろん使ってますけど、一般の住宅で家を真っ赤な壁にするとか、真っ青な壁にすることはあまりないじゃないですか。だけど、求められてるのは自然ぽさ、土壁なんかはまさに土のようですよね。
漆喰なんかにもそうだけど少しこういうものを混ぜることで、淡く少し緑色っぽい色になったり、少し黄色っぽい色になったりって、淡さというか自然の癒される色、それがこの色なんだそうですよ。使ってる人を見ると、他の今までの合成顔料は原色系ですから。絵の具じゃないけど、赤だの黄色だのそれは絵を書くときに、混ぜて空の色出したり、葉っぱの色を出したりしてるわけじゃないすか。
それがもう、これはこの色そのものなんでこれを薄めればそのイメージに近い色になるっていう。そうするとこういう色を出すためには昔の顔料なら、絵の具のパレットの上に絵の具をいくつかおいて、そこでぐちゃぐちゃって混ぜて、この茶色とか、このぐらいの赤さ加減とかを作るでしょ、これはもうこの原色これをそのまま薄めればこういうふうになるっていうイメージが湧くので、職人さんはこれがすごく良いっていう。高いのに使ってくれるようになったのはそれも大きなポイントみたいですね。
— (ネットで調べたら)画材用のラピスラズリは8g 2万4千円でした。
なぜそういう高かったら、もうほぼ永久的に変色しないんでしょうね。だからやっぱり、ゴッホじゃないけど、画材なんかね弟がみんなで金出したんだと思いますよ。彼は死んでから売れたんですよね。それまでは貧乏人で、弟がなかなか実業家なのか稼いで一生懸命お金出して。良い絵を書いて、売れるまで残っていたってことはやっぱりそういういいものを使ってるからかもしれないね。
だからやっとその素材屋じゃないんだけど、左官屋さんも雑誌のおかげかなんかもいろいろあるんでしょうけど、やっぱこういう自分でいいものを使って材料を作って確認してっていう、本当に満足するものをお客さんに提供するって時代が来たんですね。
何でもメーカーが作ってるもので、それでやるっていうのから、うちのお客さんなんかはそういう特化した人が、そういう人たちが派生する人たちがやってくれてるからだけど、やっぱり長年かかってますけど、やっとこれが売れてきたなっていう実感はあるのはとても嬉しいことですよね。
— 何年前から取り扱っているんですか?
もうどうだろう。コロナなんて4年5年でしょ、その前だから10年ぐらいになるかもしれない。10年近くは全然売れなかったですね。ただこういうのありますよっていう、あっち行って、こっちってそういう話して。やっと使ってくれて、分かりだしたっていうとこですかね。
— お施主さんからの反応はどうですか?
やっぱり仕上がりは喜ばれますよね。顔料のことをお施主さんになかなか説明することはないんですけど、やっぱりそれをやってる職人さんが説明するなり、そういう話の中に出して、私はこの壁はこういう材料とこういう材料使ってやってこうやってやってるんだと。
土の層のように見せる、そういうような工法を得意としてる人はやっぱりお施主さんにそんな話をしてると、現場の壁を塗りながらそんな話をすると、「どっか一面壁にそれできますか?」とかってお施主さんから質問が来て、話が盛り上がって、施工のグレードが上がることもあるらしいですよ。
お施主さんにもイメージがあるじゃないすか。どういう壁にしたいかとかっていうやり取りキャッチボールのやり取りの中で、その設計さんも入って左官屋さんも入って、作り上げてくわけですよね。
でもそれが本当の建築というかだと思うんですよ。それの話の中でこんなイメージなのかなこんなイメージなのかなっていうサンプル作り、するわけですよね。そうするとこういうのを使うのは土壁、漆喰壁だから、普通、サンプルを作って、いくつか作って、こんなイメージでこれはどうでしょうかっていうことでこれがいいねとか、そういうふうに決めていくからやっぱお施主さんはもちろん出来上がったものはOKですよ。
天然無機顔料 (DOLCI)ではまずね、今まで失敗の話は聞いたことないですし、うん、ただただ多くのサンプル作って、お客さんが納得いくようにやらなきゃねそれは話は別ですよ。
もちろん品質はいいし、その分高価ではあるけれども、実際にその物を見れば職人さんも使って素晴らしいし、お施主さんの方ももう素晴らしいものができるってことでですね。両者ともにすごく良い素材でだから。
— いいものを組み合わせて仕事をするってことは職人さんもすごく楽しみですよね
そのまさに土なんかはね、何億年かけてできてる素材ですから、この土の本なんていうのも、読んだりしましたけど、土のね、土ができるってことってのは、とんでもない地球ができるときからもう長い時間がかかっていますよね。
そこにね、植物もちろん動物もちろん、恐竜が絶滅したとかね、そんなんだって全部土の、今ある掘った土、全部関わってる話なんですよね。だから奥が深い。土も日本全国世界中でそうだけど、いろんな土が自然界にあるわけだし、昔の人ってのは、今みたいな材料がいろいろなくてね、家建てるっつったら、河原や山から石持ってきて並べて、それで木切って来てそこへ組んで、あと何があるって周りに土ですもんね。
畑の土かその辺の田んぼの土持ってきて、それに土塗ってね。紙で貼ったり障子貼ったりして家にしたって。その昔竪穴なんて地面に穴掘って、雨が侵入しないように周りに土盛って、屋根掛けて、それで寝泊まりしてたわけだし。その土が固まって壁にするとか。
(諸説ありますが)その起源って、雨が降った後にぬかるむじゃないすか。それが雨が止んで、ちょっと水蒸気が上がって、乾きっぱなしの上に人間が歩くと足跡ができますよね、これって土で固まるんだって人間が理解して。どうもそういうことから造形して、壁にするとか塀にするとか、そういうことって言われることもあるらしいですよ。
それまでは、それこそね、洞窟住んだり、洞穴住んだりだったでしょうけどね。だからあの壁にするっていうイメージはそういうことだったんですよ。ただ土だけじゃ、水があったら流れちゃうから砂入れて流れないようにしようとか、そういうようなことからこうね、組み合わせが今のあれに至ってるみたいなんですけどね。
いろんな左官屋さんやいろんな人に聞いて本読んだりそんな話のあれですけどね。
スピーカー:富沢建材株式会社 冨澤 英一 代表取締役社長
ナビゲーター:左官コミュ運営