東京都 S邸 大津磨き
感動の物語。
素晴らしい左官技との出会いがありました。
東京都のS邸。
そこには建築、庭園、その他見る物全てにおいて伝統的職人技が
生きる究極の館です。
左官に関しても、大津磨き、土壁水捏ね・糊さし、漆喰壁、漆喰蛇腹引きと
技のオンパレードで、施工は忍者左官 小沼充氏の手によるものです。
二つの洗面所のうち、一つは朱の大津磨き仕上げで、
いきなり凄い大津の世界へひきずり込まれます。
どうですかこの魅惑の空間!
思わず遠山記念館を思い浮かべる出来映えです。
こちらは白の大津磨きです。
何とも言えないキメの細かい肌は土の持つ魅力を最大限に引き出し、
渋い上品な光を放ち深く美しく輝いています。
濡れ縁に設置された粋な腰掛けです。
壁面は周りを優しい色合いに染める桃色の土で仕上げた大津磨きで、
とてもお洒落で粋なスポットになっています。
どれもが頬すりしたくなるようなしっとりとした仕上がりで、
見ていると気持がとても落ち着く癒し壁です。
本物を知りこだわりの目を持って日本の美技を求めるお施主様と、
本物を作り上げる為の技と手間を惜しまず取り組む職人との出会いは
感動の物語を創り出します。
本物に出会う機会の少ないこの時代に巡り会えた本当に素晴らしい宝物。
忘れかけた伝統の日本文化の素晴らしさと、
こだわりを拝見する事が出来ました。
ありがとうございました。
※ソムリエ雑記再録のため現在と異なる情報が掲載されている場合がございますのでご了承ください。
冨澤 英一
富沢建材株式会社代表取締役。1953年東京都中野区生まれ。昭和26年に父が創業した建材店を2代目として継ぐ。顧客であった左官・故榎本新吉さんに幼少のころから可愛がられ、その縁で『左官教室』元編集長・小林澄夫さん、左官・久住章さん、全国各地で活躍する多くの名工、名人に出会う。以降、左官の技や自然素材に惹かれ、熱心に各地に足を運び、そこで産出する土や砂、石灰などの左官材料を集め、販売している。