小沼充 青松寺 大津床磨き
東京都港区愛宕にある青松寺の現場に、今回特別に許可をいただき
3日間見学させていただきました。
小沼充氏が究極の技を駆使する、座禅堂床の大津磨き仕上げの施工で、
今回は周り廊下の改修です。
8年前の工事を懐かしく思い出し、この日を楽しみにしていました。
小沼充氏が生み出した大津床磨きの技は、
8年前にすでに完成の粋を見ていますが、そこに留まらないのが氏の持つ
飽くなき探求心で、今回は何が起こるのか・・・心がはやります!
この状態で既に下地は準備万端、1回目の仕上げ段階の引土を塗り付け
充分に馴染むまで鏝圧をかけて押さえ込みます。
その後、タイミングを見て2回3回と仕上げ引土ノロを塗り付けていきます。
大面積の床に厚みを均一に塗り付ける作業は大変です。
でも皆さん小沼氏の指導のもとしっかりと技術を学んでいきます。
さあ、ここからが勝負!
この日は8人態勢で床面の端から端までローテーションを組み
入れ替わり立ち替わりの押さえ込みにかかります。
左右手が届く範囲をムラ無く鏝を当てていきます。
何とこれをほぼ一日続けるのです。
皆さん息絶え絶えに頑張ります。
見ているだけでも疲れてきます・・・などと言ったら怒られますね!
ほぼ押さえが完了。
大分大津独特の輝きが出て来ました。
そして次に軍手で手擦り磨きをおこないます。
丁寧に丁寧に心を込めて磨き込みます。
数日はこれを続けろそうです。
足にも軍手??
また小沼氏いつものおふざけパフォーマンスかと思いきや、
氏曰く 「足に力が入り爪が立って床を傷付けることがあるので履くんです。」
と、にやにやしながら語ります。納得。
んっ でも靴下でもいいよな、と後からやっぱり現場に笑いが起こるのです!!
緊張が続いた中、疲れが癒される瞬間です。
その日に出来る行程の最終チェックです。
見事な輝きです。
その深みのある美しさに心が引き込まれていきます。
進化を感じる深みです。
そして素足で踏みしめれば優しく何とも心地が良いのです。
冬の寒い時は暖かく、夏の暑いときは爽やかに涼しいのでしょう。
土や石灰の素晴らしさを大いに体験出来ました。
青松寺本堂を挟み、座禅堂の対面に位置する観音聖堂の
青大津磨きの大壁です。
こちらも8年前に施工、木摺下地技術の粋を凝らした大作は、
地震にもびくともせず美しい輝きを放っています。
これも小沼氏の歴史に残る秀作です。
感動の3日間で凄い勉強をさせていただきました。
小沼氏の何処までも深い左官思考に改めて脱帽です。
そして志一つに左官職人さんが集結し前人未踏の左官技に挑む姿に、
体が震えるほどの感動を覚えました。
小沼充様、皆様、ありがとうございました。
皆様の今後の益々のご活躍をお祈りしております。
追伸:私事、毎夜夢の中でも皆さんの床磨きが行われていました。
※ソムリエ雑記再録のため現在と異なる情報が掲載されている場合がございますのでご了承ください。
冨澤 英一
富沢建材株式会社代表取締役。1953年東京都中野区生まれ。昭和26年に父が創業した建材店を2代目として継ぐ。顧客であった左官・故榎本新吉さんに幼少のころから可愛がられ、その縁で『左官教室』元編集長・小林澄夫さん、左官・久住章さん、全国各地で活躍する多くの名工、名人に出会う。以降、左官の技や自然素材に惹かれ、熱心に各地に足を運び、そこで産出する土や砂、石灰などの左官材料を集め、販売している。