Skip to main content
コラム

人間の生活に必要不可欠な素材である「土」。今回は土とは何か、意外と知られていないその種類や用途について解説していく。

土とは・・・

「土」とは、日本壁の左官材料の代表格である。左官用の土は、粘土室の高い天然の原土を採取し、乾燥させすり潰しながら不純物を取り除きパウダー状にしたものだ。

土は、地球の中心にあるマグマが地表に近くなるにつれ冷やされ岩になり、それが細かく砂、さらに細かい粒子になり、そこに木々が倒れ、葉が落ち、動物の死骸が埋もれ何千年もの時間を掛けて無機有機物と混ざりあってできたものである。山、田んぼ、畑、河川周り、また東京の地面のコンクリートを剥がした下にも存在し、日本全国で採取出来る素材だが、粘土室や精製粒度、色味が整ったものは概ね産地が限定される。

建築における土壁は、日本の気候や風土に適した仕上げとして昔から用いられてきた。特に土の性能が際立っているのは、最近では数が減ってしまった土蔵である。内部に入ると夏は空気がひんやりとしていて涼しく、冬は外気を遮断して寒さを和らげる。通年室内の安定した環境を保つその特長を生かして、穀物、商品、家財などを湿気、火災、盗難などから守り、保管、貯蔵するものとして無くてはならない建物であった。

また家屋においても、夏をいかに快適に過ごすか、という課題が日本の建築の根底にあるため、調湿性、断熱性に優れる土壁は、当たり前の存在として用いられてきた。

さらに、土壁の魅力は性能だけではなく、その仕上がりの多彩さや美しさにもある。地殻や環境の違い、火山活動などの要因で場所によって異なる色の土が採取され、日本では西の地域に特徴的な風合いの土が多いが、仕上げの上塗りに使用する「色土」の産地はさらに絞られる。

土の種類

京都の土

色味と風合いが一番上等なものとして有名なのは京都地域で採取精製される土で、代表的なものに「本聚楽土」「稲荷山黄土」「京錆土」「浅黄土」がある。

土壁の本場でもある京都では、土に対する愛着が強く、ある種のブランドものとして扱われる。特に、こだわりの数寄屋造りの茶室などで用いる際には天然の色をそのまま壁に表現し、経年変化から生まれる侘び寂びを楽しむ。

その他の土

日本全国に分布しているが、特に愛知県、兵庫県地域で色土が安定的に多く採取される。「白土」「黄土」「木節粘土」「中塗土」など種類も豊富。

用途

土は、スサや砂を調合して水で練り込み硬化させる。壁、土間、屋根など用途や目的に応じて厚みや強度を変え、塗り付ける。

壁の施工

荒壁土(荒壁)

荒壁とは壁の真の部分で、厚く土を塗り付け形成する。その作業を荒壁付け、及び打ち込みという。荒壁土は掘り起こした状態で水とワラスサを加え、十分に練り込み寝かせたものを使う。

中塗り土

中塗り土は、荒壁が完全に硬化した上に塗り付ける土。その工程を中塗り、及びむら直しという。中塗に用いる土は粘土質の高い土を10mm程のフルイで通し、中塗り用ワラスサと砂を調合し、練り込んで寝かせて塗る。

仕上げ土

中塗りを仕上げの種類により2〜3回塗り付けた後、仕上げ塗を行う。薄く塗り付けるのが基本で、細かく精製された色土に、みじんすさ(粉に使いワラスサ)と、細かい粒度の揃った砂を配合して寝かせて塗る。糊ごね仕上げ、水ごね仕上げ、引きずり仕上げなどそれぞれの目的によって調合を変える。

土間の施工

たたき仕上げ土(三和土)

コンクリートが無かった頃の日本の土間工法。たたきに使う土で代表的なものに京都伏見地域で取れる「深草」がある。比較的粘土分の少ない土に砂と砂利が混じっているもので、それに石灰とにがり(塩化マグネシウム)を配合する。土間の厚みの倍の量を敷き込み、それを叩いて締め固める。

土はその他、身近には焼き物(陶器)の原料、また米を作る田んぼの土、作物を栽培する畑の土と人間の生活に必要不可欠な素材である。

この記事で紹介されている商品