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コラム

土壁について

土壁の歴史やその多様さについて、奥深い土壁の世界を知りたいならまずはここから。

土壁の始まり

雨上がりに、水に使った地表の泥を踏むとぬかるむ。晴天が続くと、そこに凸凹に固まる。古代人は、土と水が練られて乾くと固くなることを知る。そこで、竪穴式住居では掘り下げた室内の周りに水で練った土を盛って縁を作り、雨水の流入を防いだ。その後、積み上げただけの住居の壁面に、水と練り合わせた泥水を手や木片で塗り付けることで雨や野生動物の侵入から守った。
しかし、土は乾燥することで収縮しひび割れが起こる。そこで藁や麻などを細かく切って混ぜ込むことで割れないようにし、さらに砂を混ぜて強度を高めた。これが土、スサ、砂、水でできた土壁の起源と思われる。

土壁とは・・・

土壁は、日本建築において欠かせない伝統工法の一つである。土壁工法は日本全国で独自の工法があった。使われる土は各地で色や性質が異なり、様々な表情を持ち、それぞれの気候風土に最も適した材料である。
自然素材の土で出来た壁は、風合いの豊かさ、癒しの効果に加え、調湿、防火性能を有している。
本来の土壁工法の手順は、下地を竹や木やワラ縄などで編組み上げ(小舞下地)、そこに練り込んだ土(荒壁土)を打ち込むように厚く塗り付け壁芯を作る。荒壁→貫伏せ→ちり回り→斑直しを行い、次に中塗り(中塗土)で表面を整える。そして各種の仕上げ土を作って水こね仕上げ、糊ごね仕上げ、切り替えし仕上げ、磨き仕上げ、版築仕上げなど様々な風合いを作り上げていく。
さらに土壁は様々な鏝や道具を使うことで無限の表情を作り上げる可能性を持っている。

土壁の種類

⚪︎下塗り

荒壁

小舞下地を用いる佐官工事において、最初に塗りつける壁。小舞の表から塗り、その乾燥を待って裏側を塗る。材料は荒壁に適した粘性のある土(関東では荒木田土)を15mmの篩で通し、それに荒目の切ワラ長さ3~9cmを混ぜて水練をし、1週間以上寝かせたもの。壁の厚さに応じて、薄ければ鏝で塗り付け、お城や土蔵のように厚く塗るばあいは泥団子を作り手で打ち込むように付け送り、塗り付ける。次の中塗りの工程までに完全乾燥させる。

中塗

荒壁(厚塗り)と仕上壁(薄塗り)の中間の厚みの壁を言う。荒土壁よりやや粘性の落ちる土を細かくするために10mmの篩で通し、それに砂、中塗りワラスサを混ぜ水練する。荒壁が完全乾燥した上に刷毛で水湿しをして、均等に丁寧に塗り付ける。綺麗な仕上げにするための大事な工程である。

⚪︎仕上げ塗り

水ごね仕上げ

聚楽壁・京壁と言われる撫でもの壁の中で、最も高い技術を必要とする仕上げ。各地の粘性の高い良質の色土を1mnmの篩で通し、みじんスサ、みじん砂を配合し水練する。基本の配合比は土10に対し微塵砂6:微塵スサ4の容積割合。均等に塗り付けた後、専用の厚みのある水鏝でゆっくりとコテを滑らせ波消しを行い、目を揃えて仕上げる。

糊こね仕上げ

水こね仕上げの材料とほぼ同様であるが、微塵砂の量を増やし、それに角又(海藻・銀杏草)を煮て作る炊き糊、又は乾燥粉末角又を配合し練り込んだ土を使う。糊を入れる分作業性が良くなり、鏝運びも楽になるが、乾燥時に収縮が出て仕上がり面は若干荒くなる傾向がある。

切返し仕上げ

中塗り仕上げと水ごね仕上げの中間に位置する仕上げ。材料は中塗り土に仕上げ土を少し混ぜ、微塵砂、または少し粗めの切返しスサ(15mm~24mm)を配合し、水で練る。糊ごね仕上げより目の粗い仕上げになる。

引きずり仕上げ

水ごね仕上げの材料を用いる。最終段階で、鏝表に丸みを付けた引き摺り鏝を使って横に引きずるようにして鏝を動かし、横波模様を付けていく仕上げ。

大津磨き

佐官壁において最高級の磨き仕上げであり、また最も手間を必要とする仕上げでもある。他の土壁と同じように中塗りまで精度良く終えた後、灰土(中塗土:ひだしスサ:石灰配合)を2回塗りし、次に引き土(白土:赤い壁の場合は弁柄・黒い壁の場合は灰墨:紙スサ:石灰配合)を2回塗りして、鏡のごとく自分が映るように仕上げる。仕上げの最終段階では、鏝表の精密な本焼き磨き鏝を使って鏝に体重を掛け、壁面に圧を加えて艶が出るまで押え込む。昔の高貴な建物、御茶室などの壁にその艶やかさが求められ、また高級な着物が壁に擦れても傷まないため重宝されたと言われる。

版築仕上げ

壁とする位置に必要とされる幅と長さの型枠を作り、そこに版築用に配合した材料を一段10cm位になるように入れて上から突き固めていき、決められた高さまで重ねて突き上げたら型枠を外す。地層のように出る模様が特徴の壁になる。材料は、空合わせで土に粗目と細目を混ぜた砂と石灰を配合し、少し湿り気を与える。セメントを若干入れる場合もある。

⚪︎土間として

たたき仕上げ

昔、セメントが無かった頃の土間の仕上げ工法。土3に対して石灰1の割合でよく空合わせをして、それに苦汁(にがり)の入った水で練る。練る硬さは、手で握って締り固まる位。固練りした材料を平均にならし広げ、それをたたき鏝やたたき板で締めていく。5cm厚の仕上げなら10cm厚に材料を敷き込み、それを5cmになるまでたたき締める。最終仕上げ面は、叩いたまま、あるいは刷毛引き、洗い出し、スポンジで拭き取るなどすることで、様々な表情を出すことができる。

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